営業では商材を売るな、自分を売り込めと言われる理由

はじめに
営業の世界でよく耳にする言葉に「商材を売るな、自分を売れ」というものがあります。
一見すると矛盾しているように感じられるかもしれません。営業マンである以上、最終的には商品やサービスを契約に結びつけなければならないからです。しかし実際には、ただ商材の良さを並べ立てるだけでは、ほとんどの場合うまくいきません。人は論理よりも感情に動かされ、商品そのものではなく「誰から買うか」を基準に意思決定をするからです。
ここでは、この考え方がなぜ有効なのか、心理的背景や営業現場での具体的なメリット、実践のための方法について深く掘り下げていきます。
第1章 人は「商品」ではなく「人」を信頼して買う
- 購買の本質は信頼
どれほど素晴らしい商品であっても、営業担当者が信頼できないと感じれば、多くの顧客は購入を避けます。人はリスクを避ける生き物であり、「この人から買って大丈夫だろうか」という心理的安全が確保されなければ行動に移りません。つまり、商材の説明以前に営業マン本人への信頼が取引の基盤になるのです。
- 商品情報は誰でも手に入る時代
インターネットの普及により、顧客は営業マンに会う前から商品情報をほとんど把握しています。価格やスペックは簡単に比較できるため、情報の提供だけで差別化することは難しい。だからこそ「この人から買いたい」と思わせることが勝負になります。
- 「人間的魅力」に左右される意思決定
行動心理学の研究によれば、人が意思決定する際の約70%は感情に基づいているとされます。理屈よりも「この人と話すと安心する」「この人なら誠実そうだ」といった感情的な要素が、最終的に契約の可否を決定づけるのです。
第2章 「自分を売る」とは何か
- 人格と誠実さの提示
自分を売り込むとは、単に自己PRをすることではありません。自分の信念や誠実さを顧客に感じてもらい、「この人に任せても大丈夫だ」と思ってもらうことを指します。営業マン自身の態度や言動が「商品以上の価値」となるのです。
- 安心感と伴走者としての立場
顧客は「売り込まれる」のを嫌います。しかし「伴走してくれる存在」には心を開きます。つまり、自分を売るとは「私はあなたの立場に立って考える人間です」と示すことです。
- 専門家としての信頼性の確立
知識や経験に基づくアドバイスを行うことで、「ただの販売員」ではなく「頼れる専門家」として顧客に認識されます。商材を売り込むよりも、顧客が安心して決断できるよう導く役割を担うことが、自分を売るという姿勢です。
第3章 商材を売るだけの営業が失敗する理由
- 価格競争に巻き込まれる
商材だけを売ろうとすると、顧客は他社との価格比較を始めます。その結果、「安い方に乗り換える」ことが容易に起こり、長期的な関係を築けません。
- 顧客の本音を引き出せない
単なる商品の説明ばかりでは、顧客は自分の悩みや不安を話そうとしません。結果として表面的な会話しかできず、ニーズを的確に把握できないまま終わってしまいます。
- 押し売りに見える
商材に固執すると、顧客から「売りたいだけの人」と見られてしまいます。この印象は大きな不信感を生み、契約どころか次回のアポイントすら取れなくなることがあります。
第4章 「自分を売る」営業のメリット
- リピーターが生まれる
商品は同じでも、「あなたから買いたい」と思ってもらえれば、顧客は再び戻ってきます。これは特に不動産や保険、法人向けサービスなど長期的な付き合いを必要とする業界で顕著です。
- 紹介が増える
信頼関係を築いた顧客は、友人や知人にあなたを紹介してくれます。「あの人なら安心して任せられる」という口コミ効果は、どんな広告よりも強力です。
- 価格以外の価値で勝負できる
あなた自身の信頼や人間性が価値となるため、単純な価格競争に巻き込まれにくくなります。顧客は「多少高くても、この人から買おう」と判断してくれるのです。
第5章 「自分を売る」ための具体的アプローチ
- 誠実なヒアリング
顧客が何を求めているのか、どんな不安を抱えているのかを真剣に聞く姿勢が必要です。聞く力こそが「自分を売る」ための最大の武器です。
- 共感と寄り添い
顧客が語った悩みに対し、理解と共感を示すこと。単なる同意ではなく、「私も同じ立場なら不安に感じます」といった寄り添いの姿勢が、心の距離を縮めます。
- 透明性のある説明
メリットだけでなくデメリットも正直に伝えることで、顧客は「この人は信用できる」と感じます。営業マンに対する信頼は、商品自体の信頼にも直結します。
- 専門性のアップデート
顧客に価値を与えるためには、常に業界知識を磨く必要があります。専門性のある人ほど「この人からなら安心」と思ってもらいやすいのです。
- アフターフォローを徹底する
契約がゴールではなく、そこから始まると考えること。購入後も定期的にフォローを入れることで、信頼関係は強固になります。
第6章 実例から学ぶ「自分を売る」営業
- 不動産営業の例
同じ物件を扱っていても、ある営業マンは「ここは日当たりがいいですよ」と表面的な説明をする一方、別の営業マンは「小さなお子さんがいるなら、ここは公園が近くて安心ですよ」と家族の生活に寄り添った説明をする。後者の方が「この人は私たちを理解している」と感じてもらいやすく、契約につながります。
- 保険営業の例
保険商品はどの会社も似ていますが、「将来のお子さんの進学を考えると、このプランなら安心です」と具体的に家族構成に合わせて提案できる人は、自分を売ることに成功しています。
- 法人営業の例
ソフトウェアを提案する際、機能を羅列するだけではなく「御社の業務フローだとこの部分の効率化が可能です」と相手の状況に合わせた提案をする。顧客は「私たちのことを理解してくれている」と感じ、契約につながりやすいのです。
第7章 まとめ
営業において「商材を売るな、自分を売り込め」と言われるのは、顧客の購買判断が論理ではなく感情や信頼に基づいているからです。情報が溢れる現代では、商材の差別化は難しく、結局は「誰から買うか」が決定打となります。
だからこそ、営業マンは商品を押し付けるのではなく、自らを信頼してもらえる存在として売り込むことが必要です。誠実なヒアリング、共感、透明性、専門性、アフターフォロー。これらを積み重ねることで、顧客との長期的な信頼関係が築かれ、結果的に商材も自然に売れていくのです。
営業の本質は「人と人との信頼構築」です。商品はその信頼の上に成り立つ副産物に過ぎません。商材よりもまず自分を売り込むこと――これこそが、成功する営業マンの共通点なのです。
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