営業でお客様の懐に入る方法
「懐に入る」とは何か
営業における「懐に入る」とは、単なる雑談で仲良くなることではなく、顧客の本音を引き出し、深い信頼関係を築くことを意味します。人は「心を許せる相手」にしか弱みや悩みを打ち明けません。営業担当者がその信頼を勝ち取ることで、顧客は安心して相談し、結果として長期的な取引へとつながります。
心理学から学ぶ懐に入る方法
ミラーリング効果
概要
人は無意識のうちに、自分と同じ行動や言葉をする相手に親近感を抱きます。これを「ミラーリング効果」と呼びます。
実践例
- 顧客が腕を組んで話しているとき、自分も軽く手を組む。
- 相手が「なるほどですね」とよく言うなら、自分も同じ言葉を使う。
会話例
お客様「最近は経費削減が厳しくてね」
営業「そうですよね、最近は経費削減が厳しいっていう声、他のお客様からもよく伺います」
同じ言葉を繰り返すだけで、「この人は自分の気持ちを理解している」と感じてもらえます。
返報性の法則
概要
人は「何かをしてもらったらお返しをしなければ」と無意識に感じます。これは心理学で「返報性の法則」と呼ばれます。
実践例
- 有益な情報を無料で提供する。
- 些細な気遣いをする(例:訪問時に小さなお菓子を持参)。
- 相手の仕事に役立つ事例を紹介する。
会話例
営業「先日、御社と同じ業界のお客様で経費削減に成功した事例があったので、参考までに資料を持ってきました」
お客様「わざわざありがとうございます。助かります」
営業「ぜひ御社にも応用できる点があればと思いまして」
こうした小さな「ギブ」が、将来の「受注」につながります。
単純接触効果
概要
心理学者ザイアンスが提唱した理論で、人は「何度も接する相手」に自然と好意を持つ傾向があります。これを「単純接触効果」と呼びます。
実践例
- 定期的にメールやニュースレターを送る。
- アポが取れなくても近況報告の連絡をする。
- 商談がなくても「お役立ち情報」として訪問する。
会話例
営業「本日はご挨拶だけで失礼しますが、業界の新しい規制について速報を共有したくて」
お客様「助かります。最近は情報が早いのでありがたいです」
こうした接触を積み重ねることで、自然と「身近な存在」として認識されます。
バーナム効果
概要
人は「誰にでも当てはまること」を「自分だけのこと」と感じやすい傾向があります。これを「バーナム効果」といいます。
実践例
- 「多くの企業様が最近○○に課題を感じていらっしゃいますが、御社も当てはまりますか?」と質問する。
会話例
営業「最近、コスト削減をしながら業務効率を上げたいというご相談が増えているのですが、御社でも似たような課題はございますか?」
お客様「実はまさにその点で困っていて…」
漠然とした言い方でも、相手が「自分に当てはまる」と感じて話を広げてくれることがあります。
具体的な会話テクニック
共通点を探すアイスブレイク
営業「名刺拝見しましたが、ご出身は大阪なんですね!実は私も大学時代は大阪に住んでいたんです」
お客様「そうなんですか、じゃあ地元は詳しいんですね」
営業「ええ、御堂筋のあたりは特によく行きました」
このように共通点を見つけると、距離が一気に縮まります。
傾聴と要約で信頼を得る
お客様「最近、人材の定着が難しくて困っているんです」
営業「なるほど、人材がなかなか定着しないのが大きな課題なんですね。特に若手の離職が多い、といった感じでしょうか?」
お客様「そうなんです。若手が1〜2年で辞めてしまって」
営業「つまり、教育にコストをかけても成果が出る前に退職してしまうのが悩みですね」
相手の言葉を要約して返すことで「ちゃんと理解してくれている」と思ってもらえます。
本音を引き出す質問
営業「御社の現状をうかがうと、コスト削減は確かに大きなテーマだと思うのですが、実際に一番頭を悩ませているのはどの部分ですか?」
お客様「実はコストよりも、社員のモチベーション維持の方が課題で…」
顧客の表面的な要望(コスト削減)から、本当の悩み(社員のモチベーション)を引き出せると、懐に入ることができます。
クロージングに至る自然な流れ
営業「先ほどのお話ですと、人材の定着と教育が一番の課題ということでしたが、弊社の研修サービスでその点をサポートできると思います。もしよろしければ、具体的なプランをご説明してもよろしいですか?」
お客様「はい、ぜひ聞かせてください」
相手の課題を言葉にして返したうえで提案すると、強引な売り込みではなく「解決策の提案」として受け止められます。
失敗例の会話集
セールストークばかりで懐に入れない例
お客様「最近、人材の採用が思うように進まなくて困ってるんですよ」
営業「そうなんですね!ところで弊社の商品は最新のAIマッチングを搭載していて…」
お客様「えっと…でも、うちが困ってるのは教育の方で…」
営業「はい、そこも弊社のサービスなら解決できます!さらに価格も業界最安値で…」
👉 【問題点】
顧客の話を遮って「売り込み」だけを展開してしまっています。顧客は「自分の悩みを聞いてもらえない」と感じ、距離を置いてしまいます。
無理なクロージングで信頼を失う例
お客様「検討はしてみますが、社内でもう少し話し合ってからですね」
営業「そうですよね!ただ、今なら特別割引もつきますし、今日中に契約いただければ…」
お客様「いや、そんなに急には決められません」
営業「でもこの機会を逃すと損ですよ?」
👉 【問題点】
「売り急ぎ」が顧客にプレッシャーを与え、信頼を失う典型例です。顧客は「この人は自分の利益より契約を優先している」と感じ、拒否反応を示してしまいます。
共通点探しで嘘をついてしまう例
お客様「最近はゴルフにハマってて、週末は必ずコースに出るんです」
営業「私もゴルフ大好きなんですよ!ドライバーはよく使います」
お客様「へえ、どこのコースに行かれるんですか?」
営業「あ、えっと…最近は忙しくて…」
👉 【問題点】
共通点を見つけるのは有効ですが、嘘をついて合わせるとすぐに矛盾が生じます。発覚したときの信頼低下は深刻です。
情報提供が自己都合になっている例
営業「今日は業界の最新レポートを持ってきました!」
お客様「ありがとうございます。どんな内容ですか?」
営業「実は弊社の商品と直結するテーマでして、これを見れば必要性がよくわかります!」
お客様「…結局セールスですか」
👉 【問題点】
情報提供は「顧客の役に立つこと」が前提ですが、自社の商品を売り込むためだけの資料だと逆効果です。「また売り込みか」と思われ、嫌悪感を抱かれてしまいます。
雑談で相手を不快にさせる例
お客様「最近は在宅勤務が多くて」
営業「いいですね!通勤時間がなくて楽じゃないですか?」
お客様「いや、在宅だと家族との兼ね合いで逆にストレスが多くて…」
営業「あ、そうなんですか…。でも羨ましいですよ」
👉 【問題点】
相手の事情を理解せず、自分の感覚でコメントしてしまった例です。雑談でも「共感」が大事で、安易に「羨ましい」と言うと相手の本音を踏みにじってしまいます。
成功例との違い
失敗例に共通しているのは、
- 顧客の話を聞かない
- 売り込みを急ぐ
- 共通点を装うために嘘をつく
- 情報提供が自己都合
- 共感より自分の感覚を優先する
という点です。
逆に、成功する営業は
- 相手の話を最後まで聞き、要約して返す
- 提案は顧客の課題解決を軸に行う
- 共通点は自然に探し、嘘はつかない
- 提供情報は「顧客にとってのメリット」が第一
- 雑談でも「共感」を意識する
といった違いがあります。
まとめ
未経験からの営業職の転職が強い就活エージェントなら、アメキャリがおすすめ!
営業でお客様の懐に入るためには、
- ミラーリング効果(相手と同じ行動・言葉を使う)
- 返報性の法則(小さな「ギブ」を積み重ねる)
- 単純接触効果(定期的な接触で好意を高める)
- バーナム効果(誰にでも当てはまる悩みから会話を広げる)
といった心理学的なアプローチを意識すると効果的です。
さらに、会話の中では
- 共通点を見つける
- 相手の話を傾聴・要約する
- 本音を引き出す質問を投げかける
- 課題に即した自然な提案を行う
これらを積み重ねることで、顧客は「この営業担当者は信頼できる」と感じ、心を開いてくれます。
最終的に、顧客が「商品を買いたい」ではなく「あなたから買いたい」と思ってくれる関係が築ければ、それこそがお客様の懐に入った証拠です。

